ことばの惑星通信 

人間ってなに?ことばってなに?生きるってなに?日々考えることを綴ります。

桜桃の味は 落語の香り

イランの映画「桜桃の味」を観た。

 

桜桃の味 ニューマスター版 [DVD]

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 一人の中年の男が自殺したくて、その手伝いをしてくれる人を求めて

ひたすら荒れた丘を車で回り続ける。

一人でいる若い男性を探す。

車に誘うととにかく質問する、出身はどこかとか、学生なら専攻は何かとか。

そしてある場所で車を停めていうのです。

「ここに掘ってある穴に自分は薬を飲んではいる。

あくる日に来て自分の名前を呼んでほしい。

返事があれば手を出して穴から出してくれ。

もし返事がなければシャベルで20杯土をかけてくれ」というもの。

お礼のお金は車のダッシュボードにある、持って帰ってくれと。

 

イスラム教では自殺は戒められている。

あなたの自殺を手伝えば、自分は殺人に手を貸したことになる。

イスラム教では殺人もまた戒められていること。

誰もやりたくない。

そんなことに関わりたくない。

 

若い男性を2人まで誘ったけれど断られる。

3人目に誘ったのは年配の男性。

今度はその人がひたすらしゃべる。

男の自殺の手伝いという目的を知って、なんとか気持ちが変わればと

自分もまたそうだった、人生に絶望して自殺をしようとしたことがあるという。

 

年配の男性が自殺を思いとどまったのは、首を吊ろうと登った桑の木の実を食べたから。

それがたまらなく美味しかったから。

語られる桑の実をどんどん食べたという話を聞いていると、

桑の実ってどんなんだったっけ?とわからない私もなんだかとても美味しそうで

みずみずしくて、柔らかくて、胃に染み渡っていくような感じを体感する。

 

ひたすら車を運転しながら荒れ地をグルグル周り、

自殺したい運転手と同乗した男たちが話す、ただそれだけの場面なのです。

 

そしてえ?っと驚くラスト。

 

監督の思惑はよくわからないけれど、

このラストと言い、ひたすら運転しながら話すことと言い、

男の自殺のやり方も、なんだかおかしな発想と言い、

これって、まるで落語だなって。

 

頼むやってくれ、いや無理だ、

そんなんいわんと、なにいうてんねんっていう。

でもって、最後は「お後がよろしいようで」なんて終わる感じ。

漫才なら「なんでやねん!もうええわ」みたいな。

 

この映画の感じ、なにか知ってるような気がしたのはこれだったのかも。